思春期~20代に乳房にしこりができる「乳腺線維腺腫」は、乳房内の線維組織と乳腺が増殖することで形成される良性の腫瘍(しゅよう)で、乳腺にできるコリコリと動く弾力性があるしこりが認められます。原因としては、乳腺と乳房の線維成分が増殖してしこりになると考えられています。片方の乳房に1個だけの場合が多いのですが、まれに複数個できたり、両方の乳房にできることもあります。
「乳腺線維腺腫」の症状は、乳房に1~3cmほどのおはじきのような平らな丸いしこりがあり、触るとコロコロとよく動くのが特徴です。乳腺症とは異なり、周囲との境界線がはっきりしていて、押しても痛みを感じることはほとんどありません。乳腺線維腺腫と診断されれば良性のまま終わり、乳がんになることはありません。しこりの数や大きさは多少増大しますが、乳腺の発達とともにわからなくなっていきます。
しこりに気がついたら、まずは専門医の診察を受け、乳がんなどの悪性疾患(しっかん)ではないことを確認しましょう。
一般的な検査方法には、マンモグラフィーと、乳腺超音波検査(エコー)の2つがあります。触診でしこりが認識された場合、針を刺して一部の細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる(乳房生検)などの検査が行われます。
良性と診断された小さなしこりでは特に治療の必要はなく、半年から1年に一度程度、定期的に診察を受け、経過観察をしていきます。しこりが大きくなったり、痛みがある場合には、手術でしこりを摘出することも可能です。この手術は局所麻酔をかけ、皮膚を数センチ切開してしこりを取り出す簡単なもので、乳房が変形する心配もなく、手術も約20~30分で終わり、入院する必要はありません。