膣は約10~15cmの弾力性のある筋肉の管で、表面は粘膜で覆われています。この膣内にがんが発生したものを膣がんといいます。膣がんには扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、腺がん、黒色腫(こくしょくしゅ)があり、約90%が扁平上皮がんです。また、膣がんには膣そのものから発生する「原発性がん」と、他の臓器からの「転移性がん」に分けられます。膣がんの原因はこれといったものがなく、発症率は低いのですが、進行が早いため「へんだな?」と思える症状が表れたら、すぐに婦人科を受診しましょう。
膣がんは、0期からⅣ期までのステージに分けられます。
がんそのものの切除が最も望ましい治療方法ですが、進行の深度を表すステージによって外科療法、放射線療法、経口剤や静脈注射のほか、抗がん剤投与すなどの治療法を行います。
0期 | きわめて早期のがんで、膣のごく表層にだけがんがある状態。 | |
Ⅰ期 | 膣の壁に限局(局所に限定)している状態。 | |
Ⅱ期 | がんが深く進み、膣の周囲の組織にまで広がっているが、骨盤の壁の骨や血管周囲までには広がっていない状態。 | |
Ⅲ期 | がんが骨盤の壁、周囲の組織、リンパ節にまで広がっている状態。 | |
Ⅳ期 | Ⅳa期 | 膀胱(ぼうこう)や直腸など膣に近い臓器にがんが広がっている状態。 |
Ⅳb期 | 肺などの膣から遠い位置にある臓器にがんが広がっている状態。 |
膣がんの治療には、外科療法、放射線療法、化学療法の3つがあります。ごく早期の膣がんに対しては、レーザー治療を行います。膣の全摘除を行った場合、ほとんど膣がなくなるため術後の性交はできなくなります。
外科療法
原発巣(がんが最初にできたところ)にがんがとどまっている場合、完全に治すことができます。ただし、膣は前方に膀胱、後方に直腸肛門が近接し、さらに足に栄養を送る血管や神経が存在する位置にあるため、手術が広範囲におよぶ場合は、どの機能をどの程度温存するかが問題となります。
放射線療法
放射線療法は、膣がんの治療の中で主な治療法とされます。放射線療法には、膣内に腺源をガンに直接照射する腔内照射(放射線療法の一つで、放射性物質を埋め込んで、がんを殺す方法)と、転移したがんをたたく外部照射(体外から放射線でがん殺す方法)があります、なお、手術をすると膣が小さくなりますし、放射線療法では膣の萎縮が起こることもあります。どちらの場合にも、術後の性交が難しくなることがあります。
化学療法
化学療法には、経口剤(口から薬を投与する方法)や、静脈注射(注射針から少量ずつ抗がん剤を投与する方法)があります。抗がん剤は血流に乗って全身をめぐり、膣壁などにあるがん細胞を消滅させるので全身療法とも呼ばれています。また、がんに対する薬剤の濃度を上げ、がん病巣に流れている動脈内に抗がん剤を直接注入する動注療法の方法もあります。これは副作用を軽減する効果がありますが、化学療法だけで完治させることは難しいので、外科療法や放射線療法と併用しての治療が一般的です。
※費用概算は大まかな目安
【ステージⅡの場合】 通院・入院(4日間)、 膣内と外部への放射線照射 |
約49万4500円~ |
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