
妊娠したことがわかると、産婦人科などで定期的に妊婦健診を受けることになります。この記事では、妊婦健診の内容や回数、自治体で異なる「妊婦健診費用助」など、妊婦健診に関して押さえておきたい情報について解説します。
赤ちゃんを授かると、産婦人科等へ通院し、定期的な妊婦健診を受けます。妊婦健診は、妊婦さん本人と赤ちゃんの健康状態を確認しながら、合併症を予防し、妊娠期間中を安心して過ごすための定期健診です。妊婦健診として毎回行う検査は、週数に応じた問診・診察のほか、子宮底長や腹囲の計測、血圧測定、浮腫(むくみ)がないかのチェック、尿検査(糖・蛋白)、体重測定などです。また、妊娠中の食事や生活に対するアドバイスなども受けます。
実は、妊娠・出産は、原則、公的健康保険の対象にはなりません。妊娠高血圧症候群や糖尿病合併、切迫早産などをはじめ、異常があるときは、その検査や治療に対する医療費は保険適用となりますが、経過が順調であれば健康保険の適用はなく、自費診療(つまり10割負担!)となります。この負担を軽減するために、自治体ごとに「妊婦健診費用助成」が行われています。

厚生労働省が示す妊婦健診のスケジュールでは、妊娠初期から妊娠23週目(妊娠6ヵ月)までは4週間に1回、妊娠24週から35週(妊娠7~9ヵ月)は2週間に1回、妊娠36週以降(妊娠10ヵ月)は1週間に1回の頻度で妊婦健診を受けることが標準とされています。初回の健診が妊娠8週頃だったとすると、出産までに合計14回の妊婦健診を受けることになります。
妊婦健診の内容も、毎回行う基本項目のほか、必要に応じて行う検査もあります。また、不正出血やおなかの張りを感じたなどのときには、イレギュラーに健診を受けることもありえます。
標準的な妊婦健診の例
期間 | 妊娠初期~23週 | 24週~35週 | 36週~出産まで |
受診間隔 | 4週間に1回 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
回数目安 | 4回 | 6回 | 4回 |
毎回行う基本項目 | ●問診・診察 ●検査・計測:子宮底長、腹囲、血圧、浮腫、尿検査(糖・蛋白)、体重 ●保健指導:妊娠中の食事や生活に対するアドバイス |
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必要に応じて行う検査 | ●血液検査(1回) ●子宮頸がん検診(1回) ●超音波検査(2回) |
●血液検査(1回) ●B群溶結性連鎖球菌(1回) ●超音波検査(1回) |
●血液検査(1回) ●超音波検査(1回) |
妊娠30週までに ●血液検査(1回) ●クラミジア検査(1回) |
出典:厚生労働省「妊婦健診Q&A」(厚生労働省資料より)
前述のとおり、妊婦健診費用は公的医療保険の適用ではありません。検査の種類や病院等によっても異なりますが、妊婦健診費用は1回5,000円程度から1万数千円かかり、これを標準の14回受けて費用を自己負担すると、総額では12万~15万円程度かかると考えられます。
妊婦健診費用を補助する「妊婦健診費用助成」の内容は自治体で異なります。事前に補助券を受け取って、病院等に提出して使用する受診券方式が中心ですが、請求をして払い戻す償還方式もあります。助成される金額も自治体で異なり、さまざまなパターンがあります。
例えば、ある市の例では、基本健診の14回分と検査項目ごとの受診券が発行され、病院等に提出して助成を受けます。受診券にはそれぞれ上限額が設定されており、それを超える分だけが請求されるしくみになっています(上限額12万円まで助成)。
人によっては、15回以上の健診を受ける場合もあり、中には、「15回まで」「回数無制限」としている自治体もあります。受診券の上限額を超えた分は自己負担ですが、中には、その自己負担分をあとから請求することで負担してくれる自治体があるほか、最初から受診券に上限額を設けていない自治体も存在します。
償還払いのケースでは、領収書と診療明細を付けて請求することで支払われるわけですが、自治体の窓口で直接請求できるようになっているようです。
受診券方式・償還方式ともに、トータルでの上限額も自治体によって異なり、「10万円まで」「13万円まで」「上限なし」などさまざまです。
妊婦健診の自己負担額は、自治体の「妊婦健診費用助成」の制度の内容や、通う病院等で異なります。完全無料の場合もあれば、数万円以上の負担となるケースもありそうです。まずは住んでいる自治体の制度をチェックしてみるといいでしょう。
「妊婦健診費用助成」には受診券方式と償還方式があると書きましたが、多いのはやはり受診券方式です。通常は、妊娠がわかって自治体へ「妊娠届」を出すと、母子手帳と一緒に妊婦健診補助券が受け取れるようになっています。妊婦健診を受けるたびに、この補助券の中から該当するものを提出して補助を受けますので(自治体によって異なる場合もあります)、なくさないようにしましょう。
妊婦健診補助券は、住んでいる自治体内の病院等や、自治体が指定する地域の病院等でのみ有効です。それ以外の病院等で妊婦健診を受けるときには、補助券は使えません。対象外の病院で妊婦健診を受ける場合は、いったん全額を払って後から請求するなどの手続きが必要になります。

里帰り出産をする予定の人は、あらかじめ出産を希望している病院で妊婦健診を受け、分娩予約をしておく必要があります。臨月になってから急に病院へ行っても、断わられる可能性があります。安定期に入ったら、早めに里帰り出産を希望する病院へ行き、里帰り出産を希望していることを伝えましょう。通常、予定日の1ヵ月前までに医療機関を移るよう指示があります。里帰り出産を希望していることは、現在、通院している病院等にもあらかじめ伝えておく必要があります。
「妊婦健診費用助成」については、補助金方式の場合、県外での妊婦健診は対象外となるため、いったん自己負担をして、後で払い戻しの請求を行うことになります。手続きの方法や請求のタイミングなど、住んでいる自治体で事前に確認をしておきましょう。病院で受け取った領収書・診療明細書などは、なくさないよう保管しておきましょう。
妊婦健診費は医療費控除の対象となります。国税庁のサイトにも、「医師による診療等の対価として支払われる妊婦の定期検診の費用は、医療費控除の対象となります」とあります。ただし、医療費控除の対象になるのは、あくまでも補助額を引いた実際の自己負担額と交通費(電車代・バス代等)のみです。
医療費控除は、1年間(1月1日から12月31日)にかかった医療費が10万円(所得200万円未満は所得の5%)を超えた場合に、確定申告をすることで税金が還付されます。計算式は下記の通りですが、妊婦健診の補助額や、出産費用なら出産育児一時金、入院給付金・手術給付金、高額療養費で戻る分などは差し引きます。さらに10万円(所得が200万円未満なら所得の5%)を引いた残りが、医療費控除額です。
妊娠・出産での自己負担額は軽減される傾向にあるため、なかなか対象にはなりにくいのですが、生計が同一(生活費を共有している)の家族であれば、医療費を合算することもできます。妊婦健診や出産費用に限らず、家族が病院等で支払った医療費の領収書や、ドラッグストア等で買った医薬品等は、専用の箱などを用意してまとめておき、年末までしっかり保管しておきましょう。

ウン十年前のことではありますが、私が妊婦健診を受けたときには、出産を担当していただく医師や助産婦さんとの信頼関係を築く意味でも、さらには、徐々に出産に向けて心を整えていく意味でも、妊婦健診は本当に重要だったように感じます。
費用の負担は「妊婦健診費用助成」で軽減を受けられるので、妊娠期間中はしっかり妊婦健診を受け、安心して出産に臨みたいものです。誕生するわが子と早く対面したいですね!
ライタープロフィール

豊田眞弓
ファイナンシャルプランナー、FPラウンジ代表。
マネー誌ライターを経て、94年より独立系FP。現在は、講演や研修講師、マネーコラムの寄稿・監修、個人相談などを行っている。大学・短大で非常勤講師も務める。趣味は講談。座右の銘は「今日も未来もハッピーに!」。
Webサイト:https://happy-fp.com/
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの最終更新日時点の税制・社会保険制度に基づくもので、すべての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
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