病気やケガで入院することになった場合、今後の治療のことが気になるのは勿論ですが、その他に入院費用や治療費等の経済的負担がどのくらいになるのかも気になるところです。そこで今回は入院した時の食事代はいくらなのか、公的な医療保険はつかえるのか等、入院時の食事代について解説したいと思います。
病気やケガで入院をすることになった場合、きちんと治療を受けて完治できるよう心の準備が必要なだけでなく、治療費等でかかる費用を払えるよう経済的な準備もしなければなりません。治療費や薬代などには公的な医療保険(健康保険)の適用がありますが、傷病や入院期間、入院する医療機関等によって費用は大きく変わるので、予め入院時にかかりそうな費用をイメージしておくのが良いでしょう。
【入院中に必要なものの例】
- 治療費
- 薬代
- 差額ベッド代
- 食事代
- 入院生活に必要なものの購入費
※入院生活に必要なものの例
筆記用具・湯のみ・ティッシュペーパー・洗面用具・バスタオル・タオル・下着・パジャマ・ガウン・滑りにくい履物・現在服用している薬と用法説明書 など
治療にかかる費用以外に必要はお金の代表格が、差額ベッド代です。差額ベッド代(室料差額)とは、入院患者が他の患者を気にすることなく、できる限り安らかに入院生活を送るために個室病室等の利用を希望する場合にかかる追加費用のことです。
差額ベッド代は1人用の個室を希望する場合だけとは限りません。2人~4人部屋でも差額ベッド代がかかる医療機関はあり、中には広くて設備が充実した特別な個室もあります。
なお、病院側の都合や、治療上必要と医師が判断した場合の個室利用については、本来差額ベッド代がかかる部屋でも負担する必要はありません。差額ベッド代が過度な負担にならないなら、治療中は心も体も辛い状況にあると考えられるので、なるべく居心地の良い部屋を選ぶと良いでしょう。
室料差額(差額ベッド代)の例
差額ベッド代の発生する個室に入院する場合の、費用と設備の例をご紹介します。
特別個室 18,857円・16,762円・14,667円
※18,857円の室内設備…床頭台・ロッカー・セーフティボックス・冷蔵庫・テレビ(無料)・電話・トイレ・バス・小机・椅子
2人室 2,619円
※室内設備…床頭台・ロッカー・セーフティボックス・テレビ(カード式)・小机・椅子
4人室 2,200円
※室内設備…床頭台・クローゼット・テレビ(無料)・インターネット回線・小机・収納ベンチ
差額ベッド代は各医療機関がホームページ等で開示しています。1日あたり10万円を超えるような特別室もあるので、もしもの時に入院しそうな医療機関の差額ベッド代を事前に確認しておくと良いでしょう。
▲どのような部屋に入院するかで、費用の負担が変わってくる
入院中の食事代は下記の標準負担額を払う必要があります。標準負担額は平均的な家計の食費を勘案して670円と厚生労働大臣が定めていますが、標準負担額を超える分は公的な医療保険が負担します。
入院時の食費(1食あたり)※令和6年6月1日以降
一般 | 490円※1 |
---|---|
一般(国の指定難病の場合等) | 280円 |
住民税非課税世帯(過去12ヶ月の入院日数が90日以下) | 230円 |
住民税非課税世帯(過去12ヶ月の入院日数が91日以上) | 140円 |
※1 管理栄養士等を配置していない保険医療機関に入院している場合は450円
※出典:協会けんぽ「入院時生活療養費」
標準負担額は原則として一律定額なので、仮に一般の人が3週間入院して、21日間3食提供を受けたとすると、490円×3食×21日=30,870円になります。長期になればまとまった額になってきますが、食費は入院していなくてもかかる費用でしょうから、入院したことによる負担増にはならないはずです。希望して特別メニューの食事を受けた場合は、標準負担額とは別に特別料金を負担する必要があります。
1年間に医療費を沢山払った人は、確定申告で医療費控除の申告をすることで課税される所得が減り、結果として納税額を減らすことができます。医療費控除の計算に含めて良い費用とそうでない費用があり、中には判断に迷う費用もありますが、入院中の食事代(標準負担額)については入院費用の一部であり、入院の対価としての費用なので、医療費控除の費用に入れて良いことになっています。ただし、入院中に外出許可がでて外で食事をした場合や、おやつ代等の医療機関から提供された食事以外は、医療費控除の対象外となります。
全国の自治体では、子育て支援策として子どもの医療費の一部を助成しています。本来であれば小学校就学前は自己負担割合が2割、小学生以降は3割ですが、助成により自己負担分を助成してもらえます。自治体によっては入院時の食事代も助成してもらえます。
助成内容は自治体によって異なり、対象となる子どもの年齢も異なるので、詳しくは居住している自治体の助成内容を必ず確認するようにして下さい。
例 東京都世田谷区の場合(世田谷区のホームページより)
助成してもらえる費用…保険診療の自己負担分全額、入院時の食事の自己負担分
対象となる人…世田谷区内に住所があり、18歳に達した日以後最初の3月31日まで
※2024年9月時点
※出典:世田谷区「子ども等医療費助成制度」
日本は国民皆保険ですが、加入している公的医療保険制度は人によって異なります。自営業者等が加入する国民健康保険や主に大手企業勤務者が加入している個別の健康保険組合、中小企業勤務者が加入している協会けんぽ、高齢者が加入している後期高齢者医療保険等があります。
入院中の食事代は公的医療保険制度の高額療養費の給付対象になりませんが、1食490円を超える金額を独自の付加給付としている健康保険組合もあります。
健康保険組合に加入している本人(被扶養者)だけでなく家族(被扶養者)も対象かどうかを含めて、事前に給付内容を確認しておくと良いでしょう。
入院の費用はいつかかるかわからない、いくらかかるかわからないので不安になります。今できる事としては、加入している公的な医療保険の給付内容を確認しておくことや、将来病気やケガで入院する可能性がありそうな医療機関の入院時食事療養費や差額ベッド代等を確認しておくことです。そして入院することになった時に慌てないよう、経済的な備え(貯蓄や私的な保険加入等)をしておきましょう。
ライタープロフィール
松浦建二FP
CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
- ※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの最終更新日時点の税制・社会保険制度に基づくもので、すべての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
生命保険を学ぶ
- 2024年・公的介護保険制度の改正ポイントとは?
- 入院中の食事代、公的は医療保険でどこまで負担してもらえるの?
- 治療が月をまたぐ場合の医療費
- 家族の医療費は合算できる?
- 傷病手当金とはどんな制度?
- 退職後も、傷病手当金は受給できるの?
- 持病がある方も入りやすい保険があるの? ~糖尿病などが気になる方の保険選び~
- 認知症保険とは?基礎知識から加入のポイントまで詳しく解説!
- 保険料が安いかだけを重視してない?自分に必要な保障とあわせて考えよう
- 70代・80代の保険選び 本当に保険は必要?加入できる保険はある?
- 50代・60代は保険を見直そう!死亡保険・医療保険・がん保険別のポイント
- 40代におすすめの保険の選び方 死亡保険・医療保険・がん保険別にご紹介
- 30代の保険の選び方とは?男女×ライフスタイル別の具体例も解説
- 20代に保険は必要?男女別の平均保険料や独身・既婚別などおすすめの選び方をご紹介
- 専業主婦(主夫)に保険は必要?適当な保障の内容や金額は?
- 貯蓄型保険vs掛け捨て型保険!メリット・デメリットを徹底比較
- シングルマザーの保険選び 公的な助成制度や保険選びのコツもご紹介
- 定期保険vs終身保険、どちらの死亡保険を選ぶ?しくみや解約返戻金の違いを解説
- がん保険の診断給付金(一時金)は必要? 最適な金額はいくら?
- がん保険は病気でも入れる?告知は必要?
- 入院費用ってどれくらい?自己負担額は? 気になる相場を調べてみよう
- 生命保険料はいくらが相場?月額平均を複数のデータから徹底検証
- がん保険は必要? 不要? 納得して選択するための基本を解説
- 医療保険は必要? 不要? 加入の必要性をわかりやすく解説!
- ネット保険のメリットを対面販売と比較して考える
- 公的医療保険とはどんな制度?ポイントを知っておこう!
- 公的年金とはどんな制度?老齢・障害・遺族年金を徹底解説!
- 保険料と医療費は控除できる!知っておきたい控除のしくみ
- 保険のことがよく分かるコラム
- 生命保険の仕組み
- 必要保障額の考え方
- 生命保険用語辞典