日本の公的医療保険制度では、子どもにかかる医療費が7割から8割保障されています。さらに、各自治体による医療費の補助制度もあり、多くの自治体では未就学児の医療費自己負担額は0円となっています。
この記事では、子どもの医療費に関する公的医療保険制度や自治体の補助制度、医療費以外に必要な費用、さらに民間の医療保険の選び方まで、子どもの医療費に関する重要なポイントをくわしく解説します。
子どもの医療費はかからない?いいえそんなことはありません。日本の公的医療保険では医療費も自己負担割合は、未就学児2割、小学校入学後は3割となっています。本来かかっている医療費のうちの8割または7割を、公的医療保険制度から支払っているためです。ではなぜ子供の医療費はかからないといわれるのでしょう?
その理由は、個人負担分の2割または3割の医療費部分について、子育て中の家計の負担軽減のために、各都道府県・市区町村で、独自の制度を設けて助成しているからです。
公的医療保険制度における医療費の自己負担割合
年齢 | 自己負担割合 | ||
---|---|---|---|
健康保険 国民健康保険 |
小学校 入学前 |
2割 | |
小学校 入学後~ 69歳 |
3割 | ||
70歳~ 74歳 |
2割 | ||
3割(現役並み所得者のみ)※ | |||
後期高齢者医療制度※ | 75歳以上 | 一般所得者など | 1割 |
一定以上の所得のある方 | 2割 | ||
現役並み所得者※ | 3割 |
出典:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
※65歳以上74歳以下で、一定以上の障害があると認定を受けた方も、後期高齢者医療制度への加入を選択することができます。
子どもの医療費のしくみ
窓口での実際の支払がないことから、子どもの医療費は無料と思われがちですが、保険料と税金で賄われているということになります。
助成対象となるのは、医療機関で支払う公的医療保険が適用となる費用になります。医療費・薬代・健康保険が適用される補装具・眼鏡などが該当します。
助成対象にならないもの
保険適用外の健康診断・予防接種・薬の容器代・入院時の食事代・差額ベット代、先進医療
そのほかに
幼稚園、学校等でけがをした場合
日本スポーツ振興センターの災害共済給付の対象となるけが
小児慢性疾患など特定の疾患がある場合
他の医療費助成が受けられるもの
交通事故など第三者から受けたけが・病気の場合
損害賠償が受けられるもの
1.マル乳 乳幼児医療費助成制度の略称
対象者:6歳に達して以降、最初の3月31日までの子ども
2.マル子 義務教育就学時医療費助成制度の略称
対象者:義務教育就学期にある児童(6歳に達する日の翌日以後の最初の4月1日から15歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども)
3.マル青(あお) 高校生等医療費助成制度の略称
対象者:高等学校就学期(15歳4月から18歳の3月31日)にある子どもで、高校在学中か否かは問わない
あなたのお住いの自治体では、何歳まで助成制度を利用できますか?
子どもの医療費助成制度は自治体によって、内容がバラバラです。
以下のような点で違いが現れます。
- ①助成される子どもの対象年齢
- ②通院、入院の別
- ③対象家庭の収入金額の上限とその有無
- ④現物支給(現物支給:医療費を支払う窓口で支払いが無料となる)なのか、償還払い(一旦支払って申請をして後から費用が戻ってくる)なのか
- ⑤全額支給か一部自己負担があるのか
こども医療費助成の実施状況
対象 | 外来 | 入院 |
---|---|---|
未就学児(就学前) | 1,741(100%) | 1,741(100%) |
小学生 | 1,720(98.8%) | 1,741(100%) |
中学生 | 1,674(96.2%) | 1,723(99.0%) |
高校生 | 967(55.5%) | 1,046(60.1%) |
出典:厚生労働省 保険局「こどもにとってより良い医療の在り方等」
マル乳(未就学児)の実施状況は100%となっているため、日本中どこに行っても就学前の子どもは医療費を気にすることがないように思えます。しかしながら、年齢が上がるにつれて実施状況が下がっていることがわかります。
助成内容は自治体の財政力によりバラつきがあり、医療費助成が充実している市区町村は、その他の子育て施策にも熱心で、子育てしやすい街としてアピールしているところもあります。子どもの医療費助成制度や、その他子どものための施策を行っているかどうかで、居所を検討する子育てファミリーが少なくないことも事実です。
本来の社会保障や福祉という点から考えると、子どもの医療費助成制度とは、医療機関を受診する必要がある子どもが、親の収入の多い少ないに関係なく、適切な医療を受けられるようにするための制度であってほしいと感じます。日本国内どこに行っても同じ助成が受けられないという現状が、今後良い方向に変わっていくことを期待します。
子どもの医療費の助成制度は子育てファミリーの経済的負担を軽減することに、とても寄与しているようです。ただ、子育ては想像する以上にたいへんです。小さな、しかも体調の悪い子どもを連れて病院に行くのも一苦労です。それでも数日で治るような比較的軽いものであればいいのですが、重篤な病気のお子さんがいるご家庭は、本当にご苦労されていることと思います。子どもの医療費のみでなく、通院・入院に付随する親の休業や、所得減にも対策が必要です。
そのような状況になってしまった場合のことを考え、民間の医療保険、傷害保険で備えることも一つの方法です。高額な先進医療を受けたいと思った時も、先進医療特約を付帯していれば迷う必要もありません。子どもの医療保険料は大人と比べて安価で契約できますし、終身タイプであればずっと保険料は変わりません。障害保険はケガの通院1日から通院保険金を受け取ることができます。
家計のマイナスをすべて埋めることは難しいかもしれませんが、カバーすることは可能なのではないでしょうか。
いずれにしても、最初にご自身の住んでいる地域の医療費助成制度について調べてみましょう。子どもの重篤な病気には健康な子供のものとは異なる助成制度も存在します。それらを確認してもやはり不安が残る、上乗せの保障が必要と思われる場合は、民間の医療保険や損害保険を検討されるのも一つの方法です。
ライタープロフィール
尾田直美FP
愛知県出身。3人の子供を育てる中で『子育ってお金との戦いだ!』との思いから、日本中のお母さんがお金の心配をせずに子育てできてHappyになってほしい、と考えファイナンシャルプランナーとなり、株式会社Switppyを設立。お母さんが我慢しない家計づくりをモットーに、子育てファミリーの家計相談・保険相談は200件/年間。そのほかにFP講座を開講し。多くの女性にファイナンシャルプランナーの資格取得により、自立のお手伝いをしています。
株式会社Switppy https://switppy.co.jp/
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